餃子爺様
投稿日:2012/05/09コンビニでちらほら花火を見かけ出しました。
4月は花見だと浮かれていたのに寒かったりで、
一向に冬を脱しない感じでいましたが、すでに夏の気配です。
草木が新芽で黄緑色になり、季節の変わり目を演出していますが、
私は家の前の田んぼに水が入り、その水が溢れて道に流出しているのと、
半そで半ズボンで出歩くことが季節の変わり目を実感する材料です。
そういう気候の日は中華料理が似合います。
私は早速、半そで半ズボンで中華料理店に出向きました。
「餃子とビール!ビールは一緒に持ってきてな!」と威勢良く注文します。
男らしくドンと構えて、注文の品を時々厨房をチラ見しながら待っています。
すると爺やんが1人入って来ました。
水を運んできた店員に「餃子を食べたいんや」とおもむろに話しかけます。
そして餃子を2人前(12個)注文しました。
しかし改めてメニューを見ると2人前の餃子が付いたお得なセットが並んでいます。
爺やんは頭でそろばんをはじき、セットのが良いのではないかと気付きました。
「すいませーん!」と爺やんは店員を呼びます。
「さっきの餃子2人前やけど、こっちのセットに変えてくれんかのう?」
店員さんは快くオーダーチェンジをし、爺やんは安心した感じで背もたれに体を預けました。
「可愛い爺さんやな」と思っていると、私の頼んでいた餃子とビールがやって来ました。
グラスにビールを注ぎ、熱々の餃子をほおばり、ビールを一口。
「っっくうぅ・・」と声が出てしまいます。 その声に爺やんもこちらを気にし出しました。
餃子を一口、ビールを一口。 このコンビネーションに爺やんもソワソワした様子です。
「そうやで、爺やん。餃子は熱々をこうやって喰うのがたまらんのやで」
私は背中(左半身)で爺やんに語りかけました。
すると爺やんのところにも餃子のセットがやってきました。
「爺やん、念願の餃子やで。 さあ、パクっといったんない」
私は背中(左半身)で爺やんに語りかけました。
しかし、私の語りかけもむなしく爺やんはセットの中華飯に手を伸ばします。
確かに、そのセット内容では中華飯の餡があまりにもツヤツヤと湯気を出し、
手を出さずにはいられない感じです。
「まあ、最初は中華飯でいっても次からは熱々の餃子にいかんとな」
また私は背中(左半身)で爺やんに語りかけました。
ところが爺やん、それから一心不乱に中華飯を口に運びます。
「まさか! まさかの中華飯を全部いっての餃子では!!」
そう、そのまさかの戦法で爺やんはまず中華飯を平らげてしまいました。
そして「ふぅーっ」と肩で息をし始めました。
「腹いっぱいになっとるやんけ!餃子はどないすんねん!」
すると、チラっとこっちを見て「あんた、これ食べてくれるか?」と
食べてもらえなかった餃子たち12個を差し出します。
「えっ!?」とまどう私に「腹がいっぱいでな、すまんな」と言い伝票を手に去って行きました。
私は自分の空いた皿を爺やんの盆にのせて、新たな餃子を食べ始めました。
それが私のゴールデンウィークでした。