運命少女
投稿日:2014/08/10あだ名はチッチ。 普通の中学2年生である。
彼女のもっぱらの悩みは、
1コ上の同じ部活の先輩への恋心と、
自分の手に手相らしき線が全くないことである。
恋愛に関する悩みはおいおい話していくとして、
なぜ手相らしき線がないことをそうも悩むのか。
事の発端は彼女の友人の一人である、モエの発言である。
モエは読者モデルなんかもやっている、可愛くて目立つ女の子。
チッチとの関係は、たまたま同じクラスで席が前後になった経緯で、
何かしらとチッチに話しかけてくることから始まったものである。
モエはその容姿からクラスでも中心人物となり、
やおら周りに人が集まってくるのだが、
チッチとしてはキャイキャイ騒ぐのが苦手なため、
正直なところモエとはあまり関わり合いになりたくはないのだが、
彼女たちの席の周りに人が集まる為、
必然的にチッチもその輪の中に入ってしまう、といった状況なのだ。
モエは「私、こないだ撮影の時にスタイリストさんに手相見てもらってー」
「モエちゃんはタレント線があるね、人気者の証だよって言われたんだー」
「へー、どんな線?これ?これがそうなんだー」
「いいなー、私にはそんな線ないよー」
「チッチはどう?ある?」
話を振られたチッチは自分の手をまじまじと見たのだが、
線らしきものが全く見えないのである。
モエがチッチの手を引き寄せて「チッチ、手相ないじゃーん」と言った。
周りの女子も群がりチッチの手のひらを見ては、
「ホントだ―、線がない!」「へー、線がないなんて不思議ー」
そして言われたのは、
「何でチッチは手相がないの?」
この一言がチッチの心に突き刺さった。
なぜ、私は手相がないのだろうか。
手相がないって、何か色々欠如しているのではないだろうか。
周りはもう、モエの撮影話に花を咲かせていた。
チッチはひとり、自分の手のひらを見つめていた。