運命少女(2)
投稿日:2014/09/12チッチは陸上部に所属をしている。
種目は砲丸投げ。
砲丸投げがよく似合う、そんな印象がある。
自分に手相がないのは、砲丸を投げているからか?
砲丸のせいで手の線がなくなってしまったのか?
と思ったのだが、両方共にそういう手をしているので、
それが原因ではないことは明らかだ。
不安を抱えその日の夜、母に手を見てもらった。
「手相ねぇ、線がないわけじゃなくて、線が薄いのね、あなたは」
まじまじ見ると、うっすら線はある。
「線が薄いのは、あなたがはっきりしないからなんじゃない?」
そう言われるとそうかもしれない。
チッチはあまり自分の意見を言わない。
周りに流されながら過ごしている。
陸上部に入ったのも、小学校の時に仲良かった子に誘われたからだし、
モエと友人関係でいるのも、ただ席が近いという事だけだ。
「線が濃くなったら、あなたもはっきりするのかもね」
母はそう言って席を立った。
そう言えばテレビで線を自分で書いてもいいと言っていた事を思い出す。
チッチはまず、どの線を書けばいいかネットで調べてみた。
そこで浮かんだのは同じ部活の先輩の顔だ。
先輩はどちらかと言えばパッとしないタイプで、
あまり周りと盛り上がったりしない感じの上、
種目もチッチは砲丸だが、先輩は長距離と接点がほぼない。
今までで喋ったことは「お疲れ様です」の言葉に、
誰に言うでもなく返ってきた「お疲れー」くらいのものだ。
先輩の中でチッチの存在はむしろ空気と同じくらいナイに等しい。
「もし、先輩に興味をもってもらえたら・・・」
チッチが自分の手相に書いたのは「モテ線」と呼ばれるものだった。